もうすぐ、母の誕生日です。
この頃、年齢を重ねるほど、母の存在を大きく感じるようになりました。
今はWeChatで、ほぼ毎日ビデオ通話をしています。顔を見ながら一時間ほど話し、話が弾めば二時間になることも。毎日話しているのに、翌日にはまた話すことがあります。よくもこれほど話題が続くものだと、自分たちでもおかしくなります。
私は十四歳で親元を離れました。一緒に暮らした時間より、離れて暮らした時間のほうが、ずっと長くなりました。暮らす場所も、日々の経験も違います。それでも、母とは昔から不思議なほど話が合います。
最近は、母の中に自分を見つけることが増えました。母もまた、私の中に自分と似たところを感じているようです。私たちは、お互いを映す鏡のような親子なのかもしれません。
母には、いくつになってもかなわない
ただし、頭のよさまでそっくり、とはいきませんでした。
母は、一度読んだ文章をよく覚えていて、その内容をすらすらと話せる人です。小数点以下二、三桁のある掛け算も、暗算してしまいます。
子どもの頃、どうやって計算するのか尋ねると、「頭の中で計算できるのよ」と、当たり前のように答えました。私には、その「当たり前」がどうにも難しい。紙と鉛筆を使っても間違えることがあるので、その才能も少し分けてもらいたかったものです。
母は漢方医の娘として育ち、幼い頃から勉強が得意でした。しかし、時代や家庭の事情から、自分の望む道を自由に歩めたわけではありません。長女として弟や妹の世話を担い、早くから家族を支えてきました。
苦労の多い人生でしたが、母は自分の考えと志を持ち続けてきた人です。情に厚く、責任感が強い。人との付き合いでは礼儀や節度を大切にしながら、必要なことはきちんと言う。優しい人ですが、決して気の弱い人ではありません。
暮らしの中で教わったこと
幼い頃、私たちは人里離れた場所で、つつましく暮らしていました。雨の日には屋根が漏り、洗面器で水を受け止めることもありました。それでも母は、家の中を清潔に整え、私たちの身の回りをきちんとしてくれました。
生活が厳しくても、学ぶことを諦めない。人の好意を当たり前と思わない。自分が引き受けたことには責任を持つ。母は、日々の暮らしの中でそうした姿勢を教えてくれました。
私が何かをうまくできず、諦めかけると、
「ほかの人にできることなら、あなたにもできるはず。もう少し努力しなさい」
と言われました。
母の前では、「できない」の一言だけで話を終えるのは、なかなか難しかったのです。
子どもの頃は、少し厳しいなと思うこともありました。ただ、十四歳で家を離れたので、本格的に反抗する前に、すでに親元にはいませんでした。私の反抗期は、どうやら出番を逃したようです。
離れていても、話は尽きない
離れてからも、母との会話は続きました。気軽に電話のできなかった頃は手紙を書き、帰省すれば夜遅くまで話しました。
母は、私の人生のどの時期にも、私の気持ちを理解しようとしてくれました。うれしいことがあれば一緒に喜び、つらいときには、なぜ私がつらいのかを分かってくれる。周囲に理解してもらえないときも、まず私の側に立って話を聞いてくれました。
そして、私の気持ちを受け止めたうえで、別の見方を教えてくれます。
母は、人の気持ちや物事の成り行きをよく見ています。私が長々と説明した悩みを、母の短い一言がすっと整理してしまうこともあります。こちらはまだ話の途中なのに、母はもう核心にたどり着いている。いくつになっても、かなわないところがあります。
もちろん、いつも私に賛成するわけではありません。私が自分の責任から逃げようとすれば、そこは見逃しません。頼もしい相談相手ですが、少々手ごわくもあります。
母も、私に甘えることがある
そんな母も、私には甘えることがあります。
誰かに気持ちを分かってもらえず、傷ついたときには、私に話してくれます。そのとき、私までうまく受け止められないと、母はとても悲しそうにします。「あなたには分かってほしかった」という思いが伝わってきます。
しっかり者の母が、私の前では弱音をこぼす。そんな姿を見ると、私も母の気持ちをきちんと聞きたいと思います。長い間、私の話を聞いてくれた母に、今度は私も、安心して話してもらいたいのです。
自分も親になり、年齢を重ねるにつれて、母の強さだけでなく、その奥にある寂しさや繊細さも、以前より分かるようになりました。
同時に、自分の言葉や行動の中に、母と似たところを見つけます。筋を通したくなるところ。人の気持ちが気になるところ。そして、少しばかりの負けん気。暗算の才能は届かなかったようですが、こうしたものは、しっかり受け継いだのかもしれません。
母から受け継いだ、仕事への姿勢
司法書士・行政書士として、ご相談を伺うときにも、母から教わったことを思い出します。
相続や会社設立などの手続きには、それぞれの事情や思いがあります。お話をよく聞き、何を心配され、何を望まれているのかを理解すること。そして、お引き受けした仕事に責任を持つこと。母の姿から学んだことは、今の仕事をするうえでも、私の大切なよりどころになっています。
母の中に自分を見つけ、自分の中に母を見つける。そのたびに、母の歩んできた道が、少し近く感じられます。
毎日顔を見て話せる今も、母を想う気持ちは、年々深くなっています。会話を重ねるほど、まだ聞きたいこと、伝えたいことが増えていくのです。
お母さん、お誕生日おめでとう。
あなたの娘に生まれて、本当によかった。
これからも、たくさん話して、たくさん笑いましょう。