FEFTA × CORPORATE REGISTRATION
登記が完了しても、外為法違反が消えるわけではありません。
外国投資家による日本法人の設立、増資、株式取得等では、外国為替及び外国貿易法(外為法/FEFTA)に基づく事前届出が必要となる場合があります。届出の要否を確認しないまま出資や登記を進めることは、依頼者だけでなく、案件に関与する司法書士にとっても重大なリスクとなり得ます。
会社法・商業登記だけを見ていては足りない案件があります
外国資本が関係する案件では、投資家の属性、議決権・支配関係、実質的支配者、発行会社及びその子会社の実際の事業内容、投資実行の時期を横断的に確認する必要があります。定款目的の文言だけで結論を出すことはできません。
事前届出をしないまま投資を実行した場合
本来、外為法第27条第1項に基づく事前届出が必要であるにもかかわらず、無届又は虚偽の届出により対内直接投資等を実行した場合、単なる書類の出し忘れでは済まない可能性があります。
- 財務省・事業所管省庁から取引経緯、資本関係、実際の事業等について説明を求められる
- 刑事罰の対象となる
- 株式・持分の売却その他の措置命令の対象となる
- 設立、増資、M&A、銀行審査等に影響する
- 外国投資家、日本法人及び専門家の信用が損なわれる
商業登記が受理されたことは、外為法上の適法性を保証するものではありません。登記手続と対内直接投資審査は、相互に関連しながらも別個の法的手続です。
STATUTORY PENALTIES
具体的な法定刑:3年以下の拘禁刑・投資額の3倍に及ぶ罰金
外為法第70条では、必要な事前届出をせず、又は虚偽の届出をして対内直接投資等を行った者について、3年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はこれらの併科が定められています。
ただし、違反行為の目的物の価格の3倍が100万円を超えるときは、罰金の上限は当該価格の3倍以下となります。例えば、無届で実行した投資の目的物の価格が1,000万円であれば、法定上、罰金の上限が3,000万円となり得ます。
また、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務又は財産に関して違反行為をした場合、外為法第72条の両罰規定により、行為者に加えて法人にも罰金刑が科される可能性があります。法人に拘禁刑はありませんが、行為者と法人が同時に処罰対象となり得る点に注意が必要です。
無届が判明した後も、行政上の対応が続く
財務省は、事前届出義務違反について、刑事罰だけでなく、外為法第29条に基づく株式・持分の売却その他の措置命令の対象となる場合があることを明示しています。また、実態把握のための報告徴求等が行われることもあります。
違反の意図性、自主的な申告か当局の指摘か、認識後に直ちに申告したか、隠蔽の有無、反復・継続性等も考慮され、悪質と認められる場合には厳しい措置が講じられるとされています。
参考:財務省「対内直接投資等及び特定取得に関する違反等のモニタリング」
司法書士の責任は軽くない
会社設立、増資、株式・持分の取得等に関与する司法書士は、株主・社員、出資者、役員、資本金、払込時期、事業目的等の重要情報に接する立場にあります。外国投資及び指定業種に関する明確な兆候があるにもかかわらず、外為法の問題を全く確認せずに手続を進めた場合、受任範囲、説明義務、確認義務及び損害との因果関係をめぐる紛争につながり得ます。
事案によっては、依頼者からの損害賠償請求、司法書士としての懲戒、専門家としての信用失墜が問題となります。さらに、違法性を認識しながら虚偽書類の作成や重要事実の隠蔽に関与すれば、リスクは一層深刻です。
もっとも、依頼者に外為法違反があったからといって、関与した司法書士が当然に同一の刑事責任又は民事責任を負うわけではありません。具体的な責任は、受任内容、把握していた事実、確認・説明の経過、故意・過失等に基づいて個別に判断されます。
CROSS-BORDER PROFESSIONAL PRACTICE
渉外登記では「登記できるか」だけでなく「投資を実行してよいか」を見る
外国投資案件では、会社法上の機関設計や登記必要書類の確認だけでは十分でない場面があります。外為法上の届出要否、投資実行時期、実際の事業内容を早期に識別し、必要に応じて関係専門家・関係機関との連携を設計することが、渉外司法書士に求められる重要な役割です。
よくある質問
Q. 外国人・外国会社が出資する会社設立は、すべて事前届出が必要ですか。
いいえ。外国投資家の属性、支配関係、投資行為、発行会社及び子会社の事業、免除制度の適用等を踏まえて個別に判断します。
Q. 登記後に届出をすれば問題は解消しますか。
事前届出が必要な案件では、手続の順序自体が法令遵守の重要事項です。登記後の提出だけで、それ以前の違反が当然に解消されるものではありません。
Q. 司法書士は登記のみ受任すれば、外為法の責任を負いませんか。
一律には判断できません。受任範囲だけでなく、把握した事実、依頼者への説明、必要な確認を行ったか等が問題となり得ます。
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誠和事務所では、司法書士・行政書士の有資格者が中国語・英語・日本語で直接対応し、外国企業の日本進出、会社設立・商業登記、外為法関連手続を支援しています。
お問い合わせ・ご相談予約※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別案件に対する法的助言ではありません。届出義務、責任及び対応は、具体的な投資構造と事実関係に基づき個別に確認する必要があります。